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親の見守り契約と財産管理委任契約:家族が知っておきたいこと

Tags: 見守り契約, 財産管理委任契約, 終活, 家族, 専門家相談

親御さんの終活を考え始める中で、将来の生活や財産管理について漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。特に、親御さんの判断能力が衰えてきた時に、誰がどのように生活をサポートし、財産を管理するのかは大きな心配事の一つです。

このような不安を軽減し、親御さんが安心して「これからの暮らし」を送るために検討できる方法として、「見守り契約」と「財産管理委任契約」があります。これらの契約は、親御さんの判断能力が十分なうちに準備することで、将来的な備えとなり、ご家族の負担を減らすことにもつながります。

ここでは、見守り契約と財産管理委任契約の基本的な内容や、それぞれの違い、そしてどのような場合に検討すべきかについて、分かりやすくご説明します。

見守り契約とは

見守り契約とは、親御さんの日常生活や健康状態を見守り、必要に応じてご家族や関係機関に連絡を取ることを依頼する契約です。主な目的は、親御さんの安全や健康状態を確認し、変化があった場合に早期に対応できるようにすることです。

具体的には、定期的な電話や訪問による安否確認、健康状態や生活状況の確認、緊急時の連絡などが契約内容として考えられます。この契約を結ぶことで、遠方に住むお子さんなど、日常的に親御さんと会うことが難しい場合でも、専門家などが定期的に親御さんの様子を確認してくれるため安心感が得られます。

見守り契約は、まだ親御さんの判断能力がしっかりしている段階から始めることが一般的です。これにより、契約を結んだ相手との信頼関係を築きながら、将来に向けての準備を進めることができます。

財産管理委任契約とは

財産管理委任契約とは、親御さんの判断能力があるうちに、ご自身の財産の管理や、その他の生活に関する事務手続きなどを、信頼できる相手に任せる契約です。

この契約を結ぶことで、預貯金の管理、年金や医療費、公共料金、税金などの支払い、不動産や有価証券などの管理といった財産に関する手続きや、介護施設との契約、入退院手続きなどの生活に関する手続きを、委任された方が親御さんに代わって行うことができるようになります。

財産管理委任契約は、例えば親御さんが高齢になり、ご自身でこれらの手続きを行うのが難しくなってきた場合に特に有効です。誰に何を任せるかは、契約を結ぶ際に親御さんの意思に基づいて細かく取り決めることができます。

見守り契約と財産管理委任契約の違い

見守り契約と財産管理委任契約は、どちらも親御さんの将来の安心を支えるための契約ですが、その主な目的と内容に違いがあります。

見守り契約は、親御さんの状況を把握し、変化に気づくための「見守り」に重点が置かれています。一方、財産管理委任契約は、具体的な「手続き代行」や「管理」に重点が置かれています。

親御さんの状況や、将来的にどのようなサポートが必要になりそうかによって、どちらかの契約を選ぶか、あるいは両方を組み合わせて利用するかを検討することになります。

どちらを選ぶか、または両方を行うか

親御さんの現在の状況や将来への意向によって、最適な契約の形は異なります。

見守り契約と財産管理委任契約は、それぞれ異なる役割を担っています。親御さんの安心な暮らしのためには、「見守り」と「財産管理」の両方が重要となる場合が多くあります。そのため、多くのケースでこれら二つの契約を組み合わせて利用することが検討されます。例えば、見守り契約で日常的な安否を確認しつつ、財産管理委任契約で金銭管理を任せるといった形です。

さらに、これらの契約は、将来的に判断能力が低下した場合に備える「任意後見契約」と連携させて利用することも一般的です。任意後見契約は、判断能力が低下した後に効力が始まる契約ですが、それまでの間のサポートとして見守り契約や財産管理委任契約を結んでおくことで、切れ目のない支援体制を整えることができます。

契約を進める上でのポイント

見守り契約や財産管理委任契約を進める際には、いくつかの重要なポイントがあります。

  1. 親御さんの意思を尊重する: これらの契約は、親御さんの財産や生活に関わる非常に大切な決定です。必ず親御さん自身の意思に基づいて行う必要があります。契約内容についても、親御さんの希望を十分に聞き取り、丁寧に話し合うことが大切です。

  2. 誰に任せるかを慎重に選ぶ: 契約した相手は、親御さんの大切な情報に触れ、財産を管理することになります。信頼できる相手を選ぶことが最も重要です。ご家族に依頼することも可能ですが、専門的な知識が必要な場合や、ご家族間の負担やトラブルを避けたい場合は、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に依頼することも検討できます。専門家は守秘義務があり、客観的な立場で手続きを進めてくれるメリットがあります。

  3. 契約書を作成する: 口約束ではなく、必ず契約書を作成してください。契約内容、委任する事務の範囲、報酬の有無や金額、契約期間などを明確に定めることが重要です。特に財産管理委任契約は、金銭が絡むため、後々のトラブルを防ぐためにも詳細な契約書の作成が不可欠です。公正証書として作成しておくと、契約の存在や内容が公的に証明されるため、より安心です。

  4. ご家族で話し合う: これらの契約は、親御さんご自身の安心のためだけでなく、将来ご家族にかかる負担を軽減する役割も持っています。親御さんを含め、可能であればご家族皆さんで契約について話し合い、情報や意向を共有しておくことが望ましいです。

見守り契約や財産管理委任契約は、親御さんの「これから」をサポートするための具体的な方法の一つです。これらの契約を適切に利用することで、親御さんの安心な暮らしを守り、同時にご家族の負担を減らすことにもつながります。

どのような契約が親御さんにとって最適なのか、契約内容はどのように決めれば良いのかなど、ご不明な点や不安な点があれば、無理にご自身だけで判断しようとせず、法律の専門家などに相談してみることをお勧めします。専門家は、個別の状況に合わせて、適切なアドバイスやサポートを提供してくれます。