親が亡くなった後の手続き:家族が知っておきたい流れと期限
親が亡くなった後の手続き:家族が知っておきたい流れと期限
親御様との別れは、突然訪れることも、ある程度の心づもりがある場合もございます。いずれにしても、大切な方を亡くされた悲しみの中で、様々な手続きを進めなければならないことは、ご家族にとって大きな負担となるでしょう。
終活は、親御様ご自身の意思を整理するだけでなく、もしもの時に残されたご家族が慌てず、落ち着いて対応できるよう準備しておく側面もございます。このページでは、親御様が亡くなられた後にご家族が行う必要がある主な手続きについて、その流れと期限を中心に分かりやすくご説明いたします。
事前に全体像を知っておくことで、いざという時に「何を、いつまでにすれば良いのだろう」と迷う時間を減らし、少しでも心穏やかに故人様をお見送りし、その後の対応を進めるための一助となれば幸いです。
死亡直後に行うこと
親御様がお亡くなりになったら、まず医師による死亡確認が行われます。その後、医師から「死亡診断書」または「死体検案書」が交付されます。これは、その後の様々な手続きにおいて非常に重要な書類となりますので、大切に保管してください。
死亡届の提出(原則として7日以内)
「死亡診断書」または「死体検案書」を受け取ったら、市区町村役場に「死亡届」を提出します。この手続きは、親御様がお亡くなりになったことを公的に届け出るものです。
- 提出期限: 原則として、死亡の事実を知った日から7日以内です。海外で亡くなられた場合は3ヶ月以内となります。
- 提出先: 故人様の死亡地、本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場です。
- 届出人: 親族や同居者など、法律で定められた方が届け出ることができます。
- 必要なもの: 死亡届(死亡診断書または死体検案書と一体になっています)、届出人の印鑑(届出書に押印済みであれば不要な場合もあります)。
死亡届が受理されると、「火葬(埋葬)許可証」が交付されます。これは、火葬や埋葬を行うために必要な許可証で、葬儀後、墓地や霊園に納骨する際にも必要となります。
葬儀・告別式
多くの場合、死亡届の手続きと並行して葬儀の準備が進められます。葬儀の形式や規模は、事前に親御様の希望やご家族の意向を確認しておくと、よりスムーズに進められるでしょう。
各種契約・サービスの解約・名義変更
親御様がお使いだった様々なサービスや契約について、解約や名義変更の手続きが必要になります。これらは期限が定められているものと、そうでないものがありますが、後にトラブルにならないよう、できるだけ早く対応することが望ましいでしょう。
- 電気・ガス・水道: 各供給会社に連絡し、解約または名義変更の手続きを行います。
- 固定電話・インターネット・携帯電話: 各契約会社に連絡し、解約手続きを行います。
- クレジットカード: カード会社に連絡し、解約手続きを行います。未払いの利用料金がある場合は確認が必要です。
- 銀行口座: 口座名義人が亡くなった場合、その口座は凍結され、原則として預金の引き出しや入金ができなくなります。公共料金などの引き落としができなくなる可能性があるため注意が必要です。金融機関に連絡し、相続手続きについて相談します。
- 公共料金やサービスの引き落とし口座: 親御様名義の口座から引き落とされていた場合は、引き落としが継続できなくなるため、ご家族名義の口座に変更するなどの手続きが必要です。
年金・健康保険・介護保険などの手続き
故人様が受給されていた年金や加入されていた健康保険、介護保険について、資格喪失やそれに伴う手続きが必要です。これらは多くの場合、死亡後14日以内や1ヶ月以内など、比較的短い期限が定められています。
- 年金: 年金受給権者死亡届(報告書)を提出します。故人様が受け取られるはずだった年金(未支給年金)がある場合は、遺族が請求できます。手続き先は年金事務所や共済組合などです。
- 健康保険: 国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、資格喪失届を市区町村役場に提出します。被用者保険(会社員などの健康保険)の場合は、勤務先を通じて手続きが行われます。葬祭費や埋葬料が支給される場合があります。
- 介護保険: 介護保険被保険者証を市区町村役場に返還します。
これらの手続きには、故人様の年金手帳や健康保険証、介護保険被保険者証、届出人の本人確認書類、印鑑などが必要になることが多いです。
相続に関する手続き(期限が定められているものがあります)
親御様がお亡くなりになると、その財産(預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含む)を誰がどのように引き継ぐかという相続が発生します。相続には様々な手続きが必要で、中には期限が定められているものもございます。
- 相続人の確定: 誰が相続人になるのかを確認します。
- 相続財産の調査と評価: どのような財産がどれだけあるのかを調べます。
- 相続放棄・限定承認: 相続したくない場合や、マイナスの財産が多い場合に選択できる手続きです。原則として、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
- 遺産分割協議: 相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合います。遺言書がある場合は、原則として遺言書の内容に従います。
- 各種名義変更: 不動産、預貯金、株式など、相続した財産の名義を相続人に変更する手続きを行います。
相続手続きは、財産の種類や状況によって複雑になることがございます。特に相続放棄や限定承認には短い期限がありますので注意が必要です。
所得税の準確定申告(4ヶ月以内)
亡くなった方に所得があった場合、相続人が代わって所得税の申告をする必要があります。これを「準確定申告」といいます。
- 申告期限: 相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から4ヶ月以内です。
- 申告先: 故人様の最後の住所地を管轄する税務署です。
相続税の申告と納税(10ヶ月以内)
相続した財産の合計額が一定の金額(基礎控除額)を超える場合、相続税の申告と納税が必要です。
- 申告・納税期限: 相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10ヶ月以内です。
- 申告先: 故人様の最後の住所地を管轄する税務署です。
相続税の計算や申告は複雑な場合が多く、税理士などの専門家に相談することも検討されると良いでしょう。
その他の手続き
上記以外にも、以下のような手続きが必要になる場合があります。
- 運転免許証の返納: 運転免許センターや警察署で行います。
- パスポートの失効: 有効なパスポートがある場合は、失効手続きが必要です。
- NHK受信料の解約: NHKに連絡して手続きを行います。
- インターネット上のアカウント、サービスの解約(デジタル遺品): 故人様がお使いだったSNS、オンラインサービス、有料コンテンツなどのアカウントについても、必要に応じて解約や削除の手続きを検討します。
まとめ
親御様が亡くなられた後の手続きは多岐にわたり、それぞれに異なる提出先や期限が定められています。大切な方を亡くされた悲しみの中でこれら全てを滞りなく進めることは、非常に大変なことです。
一人で抱え込まず、ご家族で協力し合い、必要に応じて専門家(弁護士、税理士、司法書士など)の力を借りることも大切です。事前に終活として情報を整理しておくことで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
この情報が、もしもの時にご家族が少しでも落ち着いて対応するための手助けとなれば幸いです。ご不明な点や具体的な手続きについてご不安がある場合は、お一人で悩まず、信頼できる相談先にご連絡されることをお勧めいたします。