親の終活:人生を振り返る自分史の始め方と家族のサポート
親の終活を考える際、財産や物の整理、手続きなど、具体的な準備に目が行きがちです。もちろんこれらは大切なことですが、終活にはもう一つ、とても重要な側面があります。それは、ご自身の人生を振り返り、心を整理することです。その手助けとなるのが「自分史」作りです。
終活における自分史とは何でしょうか
終活における自分史とは、単なる年譜や記録ではありません。ご自身の人生で経験した出来事、感じたこと、考えたこと、大切にしてきたことなどを、ご自身の言葉で綴るものです。これは、過去を振り返り、現在を見つめ、これからどのように生きていきたいかを考える貴重な機会となります。
自分史を作ることは、ご本人にとって以下のような意義があります。
- 自己理解の深化: 人生の歩みを改めて見つめ直すことで、ご自身を深く理解し、自己肯定感を高めることにつながります。
- 心の整理: 長年の間に溜まった様々な思いや記憶を言葉にすることで、気持ちの整理が進みます。
- 家族への伝承: ご自身の経験や価値観、家族への思いなどを形にして残すことで、家族にとってかけがえのない宝物となります。
- これからの人生を見つめ直す: 過去を振り返ることで、残りの人生をどのように過ごしたいのか、具体的な目標や希望が見えてくることがあります。
自分史作成、何から始めれば良いのでしょうか
自分史作りと聞くと、難しく考えてしまうかもしれません。しかし、専門家のように立派な本にする必要はありません。ご自身のペースで、できることから始めるのが一番です。
まずは、以下のステップで気楽に取り組んでみてはいかがでしょうか。
- きっかけを見つける: なぜ自分史を作りたいと思ったのか、目的を考えてみましょう。「家族に自分のことを伝えたい」「自分の人生を整理したい」など、小さなきっかけで十分です。
- テーマを決める(または広げすぎない): 人生全てを網羅しようとすると大変です。まずは特定の時期(子供時代、仕事、子育てなど)や、特定のテーマ(趣味、旅行、学びなど)に絞ってみるのも良い方法です。
- 材料を集める: 思い出の品(写真、手紙、日記、記念品など)や、昔のノート、アルバムなどを引っ張り出してみましょう。これらが記憶を呼び覚ます助けになります。
- 書き方・まとめ方を決める:
- 箇条書き: 年表のように出来事を書き出すだけでも立派なスタートです。
- 日記形式: その時の気持ちや背景も一緒に書き添える方法です。
- テーマ別: 「私の好きなもの」「あの頃の暮らし」のように、テーマごとにまとめる方法です。
- 音声で残す: 書くのが苦手な場合は、家族や支援者に話を聞いてもらい、録音してもらう方法もあります。
難しく考えず、「自分ノート」を作るような感覚で、自由に書き始めてみましょう。
自分史作りをサポートする家族のポイント
親御さんが自分史作りに興味を持たれたら、ぜひ温かくサポートしてあげてください。ただし、無理強いは禁物です。あくまで親御さんのペースと意思を尊重することが大切です。
家族ができる具体的なサポートには、以下のようなものがあります。
- 興味を示す: 親御さんが話し始めたら、耳を傾け、質問を投げかけてみましょう。「それはいつ頃のこと?」「どんな気持ちだったの?」など、具体的な問いかけは、話を引き出すきっかけになります。
- 昔の物を見る手伝い: アルバムや手紙など、思い出の品を一緒に見るのは良い方法です。「この写真、懐かしいね」「この手紙、覚えてる?」など、一緒に振り返ることで会話が弾みます。
- 聞き役に徹する: 家族はつい口を挟みたくなりますが、まずは親御さんの話をじっくり聞くことに集中しましょう。遮らずに最後まで聞くことで、親御さんは安心して話すことができます。
- 記録を手伝う: 親御さんが話す内容を、代わりに書き留めたり、録音したりするサポートも有効です。パソコン入力や文字を書くことが負担な場合に喜ばれます。
- ツールや方法を一緒に探す: ノート、パソコン、スマホアプリなど、親御さんが使いやすい方法を一緒に検討しましょう。
- 完成を急かさない: 自分史作りは、時間をかけて自分と向き合うプロセスそのものが大切です。完成を急かさず、楽しんで取り組めるように見守りましょう。
自分史作りを通して、家族は親御さんのこれまで知らなかった一面を知り、より深く理解する機会を得ることができます。これは、終活を進める上での信頼関係を築くことにもつながります。
自分史を終活にどう活かすか
作成した自分史は、終活の様々な場面で役立ちます。
- 家族とのコミュニケーション: 家族で自分史を読み返すことで、自然と過去の思い出や未来への希望について話し合う機会が生まれます。これは、エンディングノートや遺言、お墓のことなど、デリケートな話題に触れる入り口にもなり得ます。
- エンディングノートのヒント: 人生を振り返る中で、「これは伝えておきたい」「こういう風にしてほしい」といった希望が明確になることがあります。これはエンディングノートに書く内容を見つける大きなヒントになります。
- 財産や物の整理の判断材料: 特定の物に関する思い出やエピソードを書き残すことで、その物をどうするか(残すか、譲るかなど)判断しやすくなることがあります。
まとめ
終活における自分史作りは、物質的な準備と並行して行いたい、心の整理のための大切な作業です。難しく考えず、まずはできることから、ご自身のペースで始めてみましょう。ご家族は、温かく見守り、話し相手になるなど、無理のない範囲でサポートすることで、親御さんの自分史作りがより豊かな時間になります。
人生を振り返るプロセスそのものが、これからの人生をより良く生きる力となり、そして残された家族にとって、かけがえのない人生の物語として受け継がれていくでしょう。