親の終活:もしもの時に備える実家の鍵と貴重品の保管場所、家族への伝え方
終活は、ご自身のこれからや将来について考える大切な機会です。さまざまな準備がありますが、「もしもの時」に家族が慌てずに済むように、事前に伝えておくと良いことがあります。その一つに、実家の「鍵」や「貴重品」の保管場所を家族に共有しておくことが挙げられます。
もしもの時は突然訪れる可能性があります。その際に、ご家族が実家に入れない、あるいは大切なものが見つからないといった状況になると、大きな負担や混乱を招くことになります。この記事では、なぜ鍵や貴重品の保管場所を伝えておくことが大切なのか、何をどのように伝えれば良いのかについてご説明します。
もしもの時に家族が困る状況とは
親御さんに万が一のことがあった際、ご家族はさまざまな手続きや対応に追われることになります。その中で、次のような状況に直面する可能性があります。
- 実家に入れない: ご本人が急な入院などで自宅に戻れなくなった場合、家族が実家に入って着替えや必要なものを取りたいと思っても、鍵が見つからずに困ることがあります。
- 急な出費に対応できない: 医療費や葬儀費用など、急な出費が必要になった際に、現金やキャッシュカード、通帳が見つからず、支払いが滞ってしまう可能性があります。
- 必要な手続きが進められない: 役所での手続きや公共料金の支払いなどで、印鑑や身分証明書、重要な書類が必要になったとき、どこにあるか分からずに手続きが進められなくなることがあります。
このような状況を防ぎ、残されたご家族の負担を少しでも減らすために、実家の鍵や貴重品の保管場所を事前に伝えておくことが有効です。
家族に伝えておくべき「鍵」と「貴重品」
具体的にどのような情報を伝えておくと良いでしょうか。
- 実家の鍵(合鍵)の保管場所: 自宅の鍵はもちろん、物置や車庫、勝手口など、普段使っている場所の鍵や合鍵がどこにあるかを伝えておきます。もし合鍵を家族に渡しておく場合は、その旨も伝えます。
- よく使う貴重品の場所: 普段使いの財布やキャッシュカード、印鑑(実印、認印)、通帳、健康保険証、マイナンバーカード、年金手帳など、急に必要になりそうなものの保管場所を伝えます。
- 金庫の場所と開け方: もし金庫がある場合は、その場所と鍵または暗証番号、開け方を伝えておきます。中に何が入っているかもリスト化しておくとより親切です。
- 少しの現金の場所: 救急車を呼んだ時や急な訪問者があった時など、すぐ必要になるかもしれない少額の現金をどこに置いているかを伝えておきます。
重要な書類についても同様ですが、これらは量が多い場合や専門的な内容を含む場合もあるため、別途リスト化して保管場所を伝えることも検討しましょう。
保管場所を決める際のポイント
鍵や貴重品を保管する場所は、次の点を考慮して決めると良いでしょう。
- ご自身にとって分かりやすい場所: 普段から出し入れする場所や、ご自身がすぐに思い出せる場所が良いでしょう。
- 他者には見つけにくい場所: 空き巣などのリスクを考慮し、玄関や寝室など、目につきやすい場所への無造ーズな保管は避けた方が安全です。
- 安全な場所: 湿気や火災など、もの自体を傷める可能性のある場所は避けてください。
全てのものを一箇所に集約すると、その場所自体がリスクとなる可能性もあります。いくつかの場所に分散させることも検討できますが、その場合はどこに何を置いているかをしっかり記録し、ご家族に伝えることが重要です。
家族への具体的な伝え方
保管場所を決めたら、それをどのようにご家族に伝えるかが次のステップです。インターネットに慣れていない方でも安心して取り組める方法をいくつかご紹介します。
- エンディングノートに記載する: エンディングノートは、ご自身の希望や大切な情報をまとめておくためのノートです。この中に「鍵や貴重品の保管場所リスト」として、具体的に書き記しておくことができます。家族に見つけてもらいやすい場所に保管しましょう。
- 家族リストや大切な情報リストに追加する: 終活の一環として、ご家族の連絡先や、かかりつけ医、加入している保険会社などのリストを作成している方もいらっしゃるかもしれません。そのリストに「実家の鍵と貴重品の保管場所」という項目を追加して書き加えておくことも有効です。
- 口頭で伝える: 直接会って話す際に、「もしもの時は、〇〇(貴重品)は△△(場所)にあるからね」と伝えておく方法です。一度伝えるだけでなく、時々話題に出したり、伝える内容をメモにして家族に渡したりすると、忘れられにくくなります。
- 情報を記録したものを渡す: 保管場所を書き出したメモやリストを、信頼できるご家族に直接手渡しておくと安心です。その際、「これは大切な情報だから、いざという時に見てほしい」と一言添えると、ご家族も認識しやすくなります。
インターネット上のツールやアプリで情報を共有する方法もありますが、ご家族のITリテラシーやプライバシーへの配慮も必要です。まずはエンディングノートや手書きのリストなど、より手軽で確実な方法から始めることをおすすめします。
伝える際の注意点
保管場所を伝える際には、いくつか気を付けておきたい点があります。
- 誰に伝えるか: ご家族の中でも、冷静に対応できる方や、緊急時にすぐ駆けつけられる方など、信頼できる複数の方に伝えておくと、より安心です。
- 情報の更新: 保管場所を変えたり、持っている貴重品が変わったりした場合は、伝えた内容を忘れずに更新してください。エンディングノートなどに記載している場合は、その箇所を訂正するか、新しく書き直しましょう。
- 不安を与えない伝え方を: 「もしもの時」という言葉を聞くと、ご家族も不安を感じるかもしれません。「これは、あなたが困らないための準備だよ」「お互いに安心して過ごすための備えだから」など、ご家族への思いやりを伝える形で話すと、前向きに受け止めてもらいやすくなります。
まとめ
実家の鍵や貴重品の保管場所を事前にご家族に伝えておくことは、もしもの時のご家族の負担を大きく減らす、簡単だけれど非常に大切な終活の一歩です。
全てを完璧に準備しようと気負う必要はありません。まずは実家の鍵の場所だけでも、あるいはよく使う貴重品の場所だけでも、リストに書き出してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。そして、それを信頼できるご家族に伝えてみましょう。
この小さな一歩が、ご自身とご家族双方の「安心」につながります。終活は特別なことではなく、日々の暮らしの延長線上にあります。できることから、少しずつ、ご自身のペースで進めていくことを応援しています。もし、どのように伝えたら良いか悩む場合は、ご家族と話し合ってみることも大切です。