終活の一環として考える親の介護:知っておきたい基礎知識と情報収集
親御様の終活について考え始めたとき、多くの方が将来の「介護」に漠然とした不安を感じるのではないでしょうか。今は元気でも、もし介護が必要になったらどうなるのか、費用はどのくらいかかるのか、どこに相談すれば良いのかなど、分からないことばかりだと感じているかもしれません。
終活は、ご自身の「もしも」に備えるだけでなく、残されるご家族が困らないように準備を進める大切な時間です。そして、その準備の中には、将来必要になるかもしれない親御様の介護についても含まれます。
この記事では、親御様の終活をサポートするご家族の皆様に向けて、介護について「今から」知っておきたい基礎知識と、情報収集の方法について分かりやすくご説明します。
終活と介護のつながり
終活というと、財産整理やお葬式、お墓のことなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、終活は人生の終わりに向けての準備全般を指します。その中には、健康や医療に関する希望、そして将来の介護に対する考え方も含まれます。
親御様が「こういう風に暮らしたい」「このような介護を受けたい(あるいは受けたくない)」といった希望をお持ちであれば、それを知っておくことは、いざというときに慌てず、親御様らしい生活を支える上で非常に重要になります。また、ご家族が介護に関する基本的な知識を持っておくことで、親御様やご自身の不安を減らすことにもつながります。
介護について知っておきたい基礎知識
介護が必要になったときにまず関係するのが、国の制度である「介護保険制度」です。
介護保険制度とは
介護保険制度は、介護が必要になった方を社会全体で支えるための制度です。40歳以上の全ての方が保険料を負担し、介護が必要と認定された場合に、介護サービスを利用できるようになります。
この制度を利用して介護サービスを受けるためには、「要介護認定」を受ける必要があります。
要介護認定とは
要介護認定は、専門家が本人の心身の状態を確認し、どの程度の介護が必要かを判定するものです。「要支援1・2」から「要介護1〜5」までの7段階があり、この区分によって利用できるサービスの種類や量が決まります。
申請は、お住まいの市区町村の窓口で行います。申請には、本人や家族のほか、地域包括支援センターなどに代行してもらうことも可能です。
今からできる「介護の準備」
親御様の状態に関わらず、今からできる介護の準備があります。
1. 情報収集を始める
どこに相談すれば良いか、どのようなサービスがあるかなど、漠然とでも情報収集を始めることが大切です。
- 市区町村の介護保険担当窓口: 介護保険制度に関する手続きや、地域の介護サービスに関する情報を提供しています。
- 地域包括支援センター: 主に高齢者やその家族のための総合相談窓口です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、介護だけでなく、医療、保健、福祉など様々な面から高齢者の生活を支えます。どこに相談すれば良いか分からない場合、まずは地域包括支援センターに相談してみるのがおすすめです。
- インターネットや書籍: 介護に関する基本的な情報や、制度について学ぶことができます。ただし、情報が古い場合や、特定のサービスに偏った情報もあるため、公的な機関の情報と合わせて確認することが重要です。
2. 親御様の希望を聞く
介護が必要になった場合に、どのような生活を送りたいか、どのようなサービスを利用したいかなど、親御様の希望を穏やかな口調で聞いてみる機会を持ってみましょう。すぐに具体的な話ができなくても、「もしもの時には、どうしたいか教えてほしい」と伝えるだけでも良いでしょう。
「エンディングノート」を活用して、希望を書き留めてもらうことも一つの方法です。エンディングノートには、介護や医療に関する希望を記載する欄があるものも多くあります。
3. 家族間で情報を共有する
親御様の介護について、ご兄弟や他のご家族がいる場合は、早めに情報共有を始めることが大切です。誰が中心となって親御様のサポートをするのか、どのような役割分担ができそうかなど、現時点での考えを共有するだけでも、いざというときの助けになります。
どのような介護サービスがあるのか
要介護認定を受けた後、ケアプランに基づいて様々な介護サービスを利用できます。サービスの種類は多岐にわたりますが、大きく分けて自宅で生活しながら利用する「居宅サービス」と、施設に入居して利用する「施設サービス」があります。
- 居宅サービス:
- 訪問介護: ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(入浴や食事の介助など)や生活援助(掃除や買い物など)を行います。
- 通所介護(デイサービス): 日帰りで施設に通い、入浴や食事、レクリエーションなどを楽しみます。
- 短期入所生活介護(ショートステイ): 短期間施設に宿泊し、介護や機能訓練などを受けます。ご家族の休息のためにも利用されます。
- その他、訪問看護、福祉用具の貸与・購入などがあります。
- 施設サービス:
- 特別養護老人ホーム(特養): 常時介護が必要で、自宅での生活が難しい方が入居する施設です。費用負担が比較的少ないですが、入居待ちとなることが多いです。
- 介護老人保健施設(老健): 病状が安定し、リハビリテーションや医療的なケアが必要な方が、在宅復帰を目指して入所する施設です。
- 介護医療院: 長期的な医療と介護が必要な方が入所する施設です。
- その他、有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護の指定を受けている場合など)でも介護サービスを利用できます。
これらのサービスをどのように組み合わせるか、どのような目標を持って介護を行うかなどを計画するのが「ケアマネジャー」の役割です。要介護認定を受けると、ケアマネジャーを選ぶことになります。ケアマネジャーは、本人や家族の意向を聞きながら、最適なケアプランを作成してくれます。
介護にかかる費用について
介護にかかる費用は、利用するサービスの種類や量、施設の形態、所得などによって大きく異なります。介護保険制度を利用する場合、サービス費用の1割(一定以上の所得がある場合は2割または3割)を自己負担します。しかし、これ以外にも、食費や居住費、日常生活費などが別途かかります。
まずは、介護保険制度でどのようなサービスにいくらくらいの自己負担がかかるのか、基本的な情報を知っておくことから始めましょう。詳細な費用については、利用を検討するサービスや施設に直接問い合わせるのが最も確実な方法です。
まとめ
親御様の介護は、多くのご家族にとって大きな関心事であり、不安を感じやすいテーマです。しかし、終活の一環として、元気なうちから少しずつ情報収集を始めたり、家族で話し合ったりすることで、漠然とした不安を具体的な備えへと変えていくことができます。
まずは、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してみることから始めてみてはいかがでしょうか。専門家は、それぞれの状況に合わせて、必要な情報やサポートについて丁寧に対応してくれます。
焦らず、一歩ずつ、親御様とご家族にとって安心できる道を探していくことが大切です。