親の終活で見落としがちなオンラインサービスや契約の整理方法
はじめに：なぜデジタル整理が終活で重要なのか
親御さんの終活を考える際、お家の片付けや財産の整理、お墓のことなど、目に見えるものの準備を想像されることが多いかもしれません。しかし、現代ではインターネットを使った様々なサービスが増え、パソコンやスマートフォンの中だけでなく、オンライン上にも多くの情報や契約が存在します。これらの「デジタル資産」とも呼べるものが整理されていないと、もしもの時にご家族がその存在すら知らず、手続きに大変な手間がかかったり、場合によっては金銭的な負担が発生したりする可能性があります。
例えば、毎月自動引き落としになっているオンラインサービスや、解約方法が分からない契約などです。親御さん自身も、自分がどのようなサービスを利用しているのか全てを把握できていない場合があります。
この章では、終活におけるデジタル整理の重要性をご理解いただき、具体的にどのようなオンラインサービスや契約を整理すべきか、そしてその整理方法について分かりやすくご説明します。
見落としがちなデジタル資産とは
デジタル資産と聞くと、デジタルデータ（写真や動画など）を思い浮かべるかもしれませんが、終活で特に重要となるのは、オンライン上での契約やサービス利用に関する情報です。これらは目に見えにくいため、ご家族が見落としてしまいがちです。
具体的には、以下のようなものが挙げられます。
- インターネットバンキングの口座
- ネット証券会社の口座
- オンラインショッピングサイトのアカウント（クレジットカード情報が登録されている場合など）
- サブスクリプションサービス（音楽、動画、雑誌などの定額制サービス）
- 有料のメールサービスやクラウドストレージ
- 各種Webサービスの会員情報
- SNS（ソーシャルネットワーキングサービス）のアカウント
- ポイントサービスのアカウント
これらの情報が整理されずに残っていると、ご家族がその存在を知らずに手続きが滞ったり、不正利用のリスクが生じたりすることがあります。
どのようなデジタル資産を把握・整理すべきか
親御さんが利用している可能性のあるオンラインサービスや契約を、できる限り具体的に把握することから始めましょう。
オンライン銀行や証券口座
通帳がないインターネット専門銀行やネット証券会社の口座は、存在そのものをご家族が知らない可能性があります。利用している銀行や証券会社の名前、口座番号などが分かるように情報を整理しておくことが重要です。
クレジットカード情報と利用サービス
普段使っているクレジットカード以外にも、オンラインサービス登録のためだけに作ったカードや、利用していないカードがあるかもしれません。どのクレジットカードを所有しており、そのカードでどのようなオンラインサービスや契約の引き落としが行われているかを把握します。
サブスクリプションサービス（定額制サービス）
動画配信サービス、音楽配信サービス、電子書籍、オンラインフィットネス、有料アプリなど、毎月または毎年料金が発生するサブスクリプションサービスは多岐にわたります。利用状況を確認し、不要なものは生前に解約しておくと、ご家族が死後に解約手続きをする負担を減らせます。
ソーシャルメディア（SNS）アカウント
Facebook、Twitter、InstagramなどのSNSアカウントもデジタル資産の一部です。故人のアカウントをどうするかは、その後のご家族の意向によりますが、アカウントの存在や本人の希望（残すか、削除するかなど）を事前に把握しておくと良いでしょう。
メールアカウントとクラウドストレージ
メールアカウントは、様々なオンラインサービスの登録に使われている重要な情報源です。利用しているメールアドレスやパスワード、そしてGoogleドライブやiCloudなどのクラウドストレージに保管している重要なデータがないかを確認します。
その他オンラインサービス全般
上記以外にも、光熱費や通信費のオンライン明細サービス、オンラインショッピングサイトの会員情報、ポイントカードアプリ、オンラインゲームのアカウントなど、インターネットを使った様々なサービスがあります。利用頻度が低いものや不要なものは整理を検討します。
デジタル資産の整理方法とステップ
デジタル資産の整理は、以下のステップで進めることができます。
1. 存在の把握とリスト作成
まずは、親御さんがどのようなオンラインサービスや契約を利用しているかをリストアップします。クレジットカードの明細、銀行口座の引き落とし履歴、メールの受信履歴などが、利用しているサービスを特定するヒントになることがあります。可能であれば、親御さんと一緒に、利用しているサービスや会員になっているサイトを一つずつ確認していくのが良いでしょう。
2. ログイン情報（ID・パスワード）の管理
利用しているサービスが分かったら、それぞれのサービスのIDとパスワードを記録します。この情報は非常に重要ですが、情報漏洩のリスクも伴うため、安全な方法で管理する必要があります。エンディングノートに手書きで記録する、パスワード管理ツールを利用する、特定の信頼できる家族に共有するなど、最も安全でご家族がアクセスしやすい方法を選びます。
3. 不要なサービスの解約・閉鎖
利用していないサービスや契約は、生前に解約・閉鎖しておくのが最も確実です。解約方法が分からない場合は、サービスのヘルプページを見たり、運営会社に問い合わせたりして手続きを行います。
4. 必要な情報の共有方法
どうしても生前に整理しきれない情報や、死後もご家族がアクセスする必要がある情報（例: ネット銀行の残高確認、重要なメールの確認など）については、情報の保管場所とアクセス方法をご家族に共有します。エンディングノートに記載したり、信頼できる家族に直接伝えたりする方法があります。
親御さんとの話し合いのコツ
デジタル整理は、親御さんにとっては馴染みが薄く、難しいと感じるかもしれません。話し合いを始める際は、責めるような口調ではなく、「もしもの時、家族が困らないように、一緒に整理しておくと安心だね」というように、ご家族のためになるという視点でお話しすることが大切です。一度に全てを整理しようとせず、一つずつ時間をかけて丁寧に進めることが成功の鍵となります。
まとめ：デジタル整理を終活の一つとして進めるために
終活におけるデジタル整理は、現代においては避けて通れない大切な準備の一つです。オンライン上の見落としがちな情報や契約を整理しておくことは、もしもの時のご家族の負担を大きく減らし、安心につながります。
まずは、親御さんが利用している可能性のあるオンラインサービスについて、無理のない範囲で把握することから始めてください。そして、その存在とアクセス方法を安全にご家族と共有することが第一歩となります。ご自身だけで難しいと感じる場合は、このサイトの情報や専門家のアドバイスも参考にしながら、一つずつ丁寧に準備を進めていただければと思います。