親の終活で考える最期の場所:自宅、施設、病院、それぞれの特徴と準備
終活を始めるにあたり、様々なことを考え、準備されることと思います。その中でも、「もしもの時、自分はどこで最期を迎えたいか」「家族はどこで迎えてほしいか」といった、最期の場所について考えることは、多くの方が向き合う大切なテーマの一つです。
どこで最期を迎えるかという選択肢はいくつかあり、それぞれに特徴があります。この選択は、その後の医療や介護の受け方、家族の関わり方にも大きく影響します。漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、どのような選択肢があるのかを知り、少しずつ考えていくことで、ご本人もご家族も安心してその時を迎えられる準備につながります。
ここでは、最期の場所として考えられる主な選択肢である「自宅」「病院」「施設」について、それぞれの特徴と、それに向けて準備しておくべきことについて分かりやすくご説明します。
最期の場所として考えられる主な選択肢
人が最期を迎える場所として、主に次の3つが考えられます。
- 自宅:住み慣れた家で、家族に囲まれて過ごすことを希望される場合。
- 病院:病状が急変した場合や、より専門的な医療が必要な場合。
- 施設:介護施設などに入居しており、そこで看取りケアが行われる場合。
それぞれの場所には、提供されるケアや環境に違いがあります。
自宅(在宅医療・介護)で最期を迎える
特徴
住み慣れた自宅で、ご家族とともに最期の時間を過ごしたいという希望を叶える選択肢です。ご自身のペースで過ごすことができ、面会時間の制限などもありません。
最近では、医師や看護師が自宅を訪問して医療を提供する「在宅医療」や、ホームヘルパーやケアマネジャーが自宅での生活を支える「在宅介護」の体制も整ってきています。これにより、医療的なケアや介護が必要な状態でも、自宅で過ごし続けることが以前より可能になっています。
準備として考えておきたいこと
- 医療・介護体制の確認: 往診をしてくれる医師(かかりつけ医や在宅医療を専門とする医師)、訪問看護師、ケアマネジャー、訪問介護事業所など、自宅での医療・介護を支えてくれる体制を整える必要があります。
- ご家族の協力: ご家族による見守りや日常的なケアが必要になる場合があります。ご家族がどの程度関われるのか、どのようなサポートが必要かなどを話し合うことが大切です。
- 自宅の環境整備: 医療機器の設置場所や、介護のための改修(手すりの設置など)が必要になる場合があります。
- 費用の確認: 在宅医療や在宅介護にも費用がかかります。医療費、介護サービス費、薬代などを事前に確認しておくことが重要です。
病院で最期を迎える
特徴
病気の種類や状態にもよりますが、医療機関で最期を迎えることも多くあります。特に、高度な医療処置が必要な場合や、病状が急変した場合などに病院が選択されます。
病院では、医師や看護師が常駐しており、24時間体制で医療的な管理を受けることができます。ただし、個室でない場合はプライバシーが限られたり、面会時間に制限があったりする場合もあります。
準備として考えておきたいこと
- 病状や治療方針の理解: 現在の病状や、今後どのような治療やケアを受ける可能性があるのかについて、医師から説明を受け、理解しておくことが大切です。
- 「人生会議」(ACP)の考え方: もしもの時に備え、どのような医療やケアを受けたいか、受けたくないかなどを、前もって医師や家族と話し合い、共有しておくことが推奨されています。これを「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)、日本医師会では「人生会議」と呼んでいます。
- 入院準備: 入院の可能性がある場合は、必要な持ち物などを事前に準備しておくと安心です。
施設で最期を迎える
特徴
介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、終末期ケアや看取りに対応している施設に入居している場合、そこで最期を迎えるという選択肢です。
施設には介護や看護の専門職員がおり、日々の生活のサポートから、医療的なケアまで、本人の状態に合わせたサービスを提供します。集団生活になりますが、他の入居者との交流がある場合もあります。看取りに対応しているかどうかは施設によって異なりますので、事前に確認が必要です。
準備として考えておきたいこと
- 施設の選定: 看取りに対応しているか、どのようなケアが受けられるのか、費用はどのくらいかかるのかなど、施設ごとに確認し、比較検討することが重要です。
- 契約内容の確認: 入居契約書や重要事項説明書をよく読み、看取りに関する取り決めなどを理解しておく必要があります。
- 医療機関との連携: 施設の職員だけでなく、施設の協力医療機関や、必要に応じて外部の医療サービスとの連携についても確認しておきましょう。
「どこで過ごしたいか」を考えるためのヒント
最期の場所について考えることは、決して縁起の悪いことではありません。ご自身やご家族が、これからの時間をどのように過ごしたいか、どのような最期を迎えたいかという希望を整理する大切な機会です。
- まずは話し合いから: ご本人の希望を尊重することが最も大切です。元気なうちから、家族と率直に話し合う時間を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。すぐに結論が出なくても構いません。
- 希望を整理する: どのような環境で過ごしたいか、どのような医療やケアを望むかなど、具体的な希望を整理してみましょう。
- 「人生会議」(ACP)の実践: 医師や医療従事者、信頼できる家族などと、今後の医療やケアについて繰り返し話し合い、共有することで、ご自身の意思がより明確になり、いざという時の支えになります。
- エンディングノートの活用: エンディングノートに、希望する最期の場所や受けたい医療・ケアについて書き残しておくことも有効です。ただし、法的な効力はないため、あくまで希望を伝える手段として活用します。
- 専門家や地域の窓口に相談: どのように考えれば良いか分からない場合や、それぞれの選択肢についてもっと詳しく知りたい場合は、かかりつけ医、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談してみることをお勧めします。専門家は、本人の状態や家族の状況に合わせて、適切な情報提供や助言をしてくれます。
まとめ
最期の場所について考えることは、重いテーマと感じられるかもしれません。しかし、これは「どのように生を閉じたいか」という、尊厳に関わる大切な選択であり、その準備は、残された時間をより良く生きることにつながります。
自宅、病院、施設、それぞれの場所には異なる特徴があり、どれが良いかは、ご本人やご家族の価値観、健康状態、必要なケア、経済状況、家族のサポート体制など、様々な要因によって異なります。
焦る必要はありません。まずはご本人やご家族で話し合いの機会を持ち、それぞれの選択肢について知ることから始めてみてください。そして、必要であれば、医療や介護の専門家、地域の相談窓口などのサポートも積極的に活用しながら、納得のいく選択に向けて準備を進めていくことが大切です。この準備が、ご本人にとって、そしてご家族にとって、心穏やかな時間につながることを願っています。