親の終活で考える空き家問題:リスクと対策、家族ができること
親の終活で考える空き家問題:リスクと対策、家族ができること
ご自身の親御さんの終活について考え始めたとき、あるいはご自身の将来を考えたときに、「実家」が今後どうなるのか、漠然とした不安を感じる方は少なくありません。特に、親御さんが施設に入居されたり、万が一のことがあったりした後、住む人がいなくなった実家が「空き家」になってしまう可能性は、多くのご家庭にとって現実的な課題となります。
実家が空き家になることには、様々なリスクが伴います。しかし、終活の一環として早めにこの問題に向き合い、対策を講じることで、将来的な負担やトラブルを減らすことができます。この記事では、実家が空き家になることで起こりうるリスクや、その対策、そして家族ができるサポートについて分かりやすくご説明します。
なぜ終活で実家の空き家問題を考える必要があるのか
終活というと、財産整理やお墓、葬儀のことなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、親御さんが人生の終盤を迎え、住み慣れた家を離れる、あるいは家を残して旅立たれる可能性がある以上、その「実家」の将来について考えておくことは非常に重要です。
親御さんが住まなくなった家は、そのままにしておくと空き家となります。持ち主が定期的に管理できれば良いのですが、遠方に住んでいたり、高齢で体力的に難しかったりする場合、適切な管理が行き届かなくなる可能性があります。これが、様々な問題を引き起こす原因となるのです。
実家が空き家になるとどんな問題があるのか
実家が空き家になった場合、主に以下のようなリスクや問題が考えられます。
維持管理の手間と費用
空き家であっても、建物の維持管理は必要です。定期的な掃除や換気、庭の手入れ、郵便物の確認など、手間がかかります。また、建物の老朽化を防ぐための修繕や、台風などの自然災害による破損への対応など、予期せぬ費用が発生する可能性もあります。
固定資産税などの税負担
建物や土地を所有している限り、固定資産税や都市計画税が毎年課税されます。住んでいない空き家であっても、この税負担は続きます。さらに、「特定空き家」に指定されてしまうと、固定資産税の軽減措置が解除され、税負担が最大で6倍になってしまう可能性があります。
特定空き家とは
特定空き家とは、「適切な管理が行われていない空き家」として、市町村から指定されるものです。倒壊の恐れがあったり、衛生上有害となる恐れがあったり、景観を損なっていたりする場合などが該当します。特定空き家に指定されると、自治体からの指導や勧告が行われ、それに従わない場合は命令、さらに罰金が科されることもあります。最終的には、行政代執行によって建物が解体され、その費用を所有者が負担することになる可能性もあります。
防犯や景観の悪化
管理されていない空き家は、不法侵入やゴミの不法投棄、放火などの犯罪リスクを高める可能性があります。また、草木が伸び放題になったり、建物が傷んだりすることで、地域の景観を損ね、近隣住民に迷惑をかけてしまうこともあります。
法的な問題
相続が発生した場合、実家が空き家として残っていると、誰が管理するのか、将来どうするのかなど、相続人同士で意見が分かれ、トラブルに発展するケースもあります。
空き家問題への対策:親御さんが元気なうちにできること
これらのリスクを避けるためには、実家が空き家になる前に、つまり親御さんが元気なうちに話し合い、対策を講じておくことが最も重要です。
親御さんと話し合う
まずは、親御さんが実家についてどう考えているのか、率直に話し合う機会を持ちましょう。将来、この家に住み続けるのか、施設への入居や売却を考えているのかなど、親御さんの意思を確認することが第一歩です。もし親御さんが具体的な考えを持っていなくても、子としてどのような選択肢があるのかを伝え、一緒に考えていく姿勢が大切です。
実家をどうするか、選択肢を知る
親御さんが実家に住まなくなった場合の主な選択肢はいくつかあります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、ご家庭の状況や親御さんの希望、実家の状態などを考慮して検討します。
- 売却する: 家を資産として現金化できます。維持管理の手間や税負担から解放されますが、思い出の詰まった家を手放すことになります。
- 賃貸に出す: 定期的な家賃収入を得ることができます。ただし、入居者の募集や管理の手間がかかります。リフォームが必要になる場合もあります。
- リフォームして活用する: 子ども世代や孫世代が住む、シェアハウスや民泊として活用するなど、様々な方法があります。初期費用がかかる場合があります。
- 贈与する: 子どもや孫に家を譲る方法です。贈与税がかかる場合がありますが、住まなくなってからの管理者を明確にできます。
- そのまま所有し続ける: 定期的に管理に通える場合は、この選択肢もあります。しかし、前述のリスクは伴います。
これらの選択肢を考える上で、不動産業者や専門家(弁護士、司法書士、税理士、行政書士など)に相談することも有効です。専門家は、物件の査定、契約手続き、税金、登記など、専門的な知識に基づいたアドバイスを提供してくれます。
大切な書類を整理・共有する
実家に関する権利証(登記済証や登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、建築確認済証、家の設計図面などの書類の場所を把握しておくことも大切です。これらの書類は、売却やリフォーム、相続などの手続きで必要になります。親御さんと一緒に整理し、家族で共有できる場所に保管しておくと良いでしょう。
空き家になってしまった場合の対策
もし実家が既に空き家になっている、あるいは近い将来空き家になることが避けられない場合でも、打つべき対策はあります。
定期的な管理を行う
自身で定期的に実家に通い、換気、掃除、庭の手入れなどを行います。遠方の場合は、シルバー人材センターや民間の空き家管理サービスに委託することも検討できます。費用はかかりますが、建物の状態を維持し、特定空き家への指定やトラブルを防ぐことにつながります。
解体を検討する
古い家で活用が難しい場合や、土地の有効活用を考えたい場合は、建物の解体も選択肢の一つです。解体費用がかかりますが、更地にすることで土地の売却がしやすくなるケースがあります。ただし、更地にすると固定資産税の軽減措置がなくなるため、税負担が増える点には注意が必要です。
自治体の制度を活用する
多くの自治体では、空き家に関する相談窓口を設けたり、改修や解体、活用のための補助金制度を設けたりしています。お住まいの自治体のウェブサイトを確認したり、窓口に相談したりしてみるのも良いでしょう。
家族ができるサポート
親御さんの終活における空き家問題について、子ども世代ができるサポートはたくさんあります。
- 情報収集: 空き家に関するリスクや対策、自治体の制度など、様々な情報を集めて親御さんに分かりやすく伝える。
- 話し合いのきっかけ作り: 親御さんが話しづらさを感じている場合、やんわりと話題を振るなど、話し合いのきっかけを作る。
- 専門家や自治体窓口への相談同行: 親御さん一人では不安な場合、相談に付き添い、一緒に話を聞く。
- 書類整理のサポート: 親御さんと一緒に、実家に関する大切な書類を整理し、保管場所を共有する。
- 実家の状態確認: 定期的に実家を訪問し、建物の状態を確認する。
- 空き家管理サービスの情報提供: 遠方で管理が難しい場合、利用できるサービスについて調べて情報を提供する。
まとめ:早めの準備が安心につながる
実家の空き家問題は、放置すると様々なリスクや負担を生じさせます。しかし、親御さんの終活と合わせて、元気なうちから親子でこの問題に向き合い、どのような選択肢があるのかを知り、早めに準備を始めることで、将来的な不安を軽減し、より良い形で実家と向き合うことができるようになります。
この問題は複雑で、ご家庭によって状況は大きく異なります。必要に応じて、不動産業者や税理士、弁護士などの専門家、または地域の空き家相談窓口などに相談することも検討してください。この情報が、皆様が実家の空き家問題について考え始める一助となれば幸いです。