終活で安心するためのお金のこと：費用と準備、利用できるサポート、家族で話し合う方法
親の終活を進めるにあたり、「お金のことはどうなるのだろう」「どれくらい費用がかかるのだろう」と、漠然とした不安を感じるご家族もいらっしゃるかもしれません。終活には、さまざまな形で費用が発生する可能性があります。しかし、事前にどのようなことにお金がかかる可能性があるのかを知り、準備をすることで、こうした不安を和らげることができます。
この記事では、終活に関わるお金について、どのような費用がかかるのか、どのように準備を進めれば良いのか、利用できるサポートにはどのようなものがあるのか、そして家族でどのように話し合うのが良いのかについて、分かりやすくご説明します。
終活にかかるお金の種類と費用の目安
終活は、人生の終わりに向けて身の回りの整理をする活動ですが、いくつかの場面で費用が必要になることがあります。具体的にどのような費用があるのか、見ていきましょう。
- 身の回りの整理にかかる費用
- 実家の片付けや生前整理: 不要になった家具や家電、衣類などを処分するために、業者に依頼した場合などに費用がかかります。量や依頼する業者によって費用は異なりますが、数万円から数十万円程度かかる場合もあります。
- デジタル機器やオンラインサービスの整理: パソコンやスマートフォン、インターネット上のサービスの整理を専門家に依頼する場合に費用がかかることがあります。
- 「もしも」に備える準備にかかる費用
- エンディングノートや遺言書の作成: ご自身で書く場合は費用はかかりませんが、専門家（弁護士、司法書士など）に作成や保管、執行などを依頼する場合は費用が発生します。遺言書の種類や依頼内容によって費用は変わります。
- 葬儀やお墓の準備:
- お墓: 新しいお墓を建てる、永代供養墓や樹木葬を選ぶ、など供養の方法によって費用が大きく異なります。一般的な墓石を建てる場合は100万円を超えることも少なくありません。永代供養墓や樹木葬は比較的費用を抑えられる選択肢もあります。
- 葬儀: 葬儀の形式（家族葬、一日葬、直葬など）や規模によって費用が大きく変わります。平均的な葬儀費用は100万円前後と言われていますが、内容によって幅があります。
- 仏壇・仏具: 新しく購入する場合に費用がかかります。
- 保険の見直しや加入: 現在加入している保険の見直しや、終活や葬儀の費用に備えるための保険加入を検討する場合、保険料がかかります。
- 死後事務委任契約や任意後見契約: ご自身の判断能力が低下した場合や亡くなった後の手続きなどを第三者に依頼する契約を結ぶ場合、専門家への費用や預託金が必要になることがあります。
- 亡くなった後の手続きにかかる費用
- 行政手続き: 死亡届の提出など、基本的に役所での手続きに費用はかかりませんが、戸籍謄本などの書類取得に数百円程度かかる場合があります。
- 相続関連手続き: 遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更（相続登記）、預貯金の解約、相続税の申告などを専門家（弁護士、司法書士、税理士など）に依頼する場合に費用がかかります。遺産の額や手続きの複雑さによって費用は大きく異なります。
- 法要: 四十九日や一周忌などの法要を行う場合、お布施や会食、会場費用などがかかります。
これらの費用は、どのような終活を行うか、どのような選択をするかによって大きく変わるものです。大切なのは、ご自身やご家族が「どのような終活をしたいか」を考え、それにかかる可能性のある費用を知ることです。
終活のためのお金の準備を進める
終活にかかる費用を知ったら、次に考えたいのが「どのように準備するか」です。
- まずは財産を把握する: 親御さんの財産がどれくらいあるのか、預貯金、不動産、有価証券、生命保険などをリストアップすることから始めましょう。これにより、終活にかかる費用を賄えるのか、どの程度準備が必要なのかが見えてきます。財産リストの作成については、別の記事でも詳しくご紹介しています。
- 終活にかかる費用の見積もり: どのような終活をしたいか（葬儀やお墓の希望など）がある程度決まったら、それぞれの項目にかかる費用を具体的に調べてみましょう。葬儀社や石材店、片付け業者などから見積もりを取ることも有効です。
- 資金の準備:
把握した財産と見積もった費用を比較し、不足が見込まれる場合は資金を準備する必要があります。
- 預貯金: 終活用の資金として、まとまったお金を準備しておく。
- 生命保険: 終活や葬儀費用を賄うための保険に加入する。
- 不動産の活用: 不要な不動産の売却なども資金準備の選択肢となりえます。
- 家族との共有: お金の準備状況や、終活にかかる費用について、家族間で情報を共有することが非常に大切です。
利用できる公的なサポートや制度
終活に関連して、利用できる公的なサポートや制度がある場合があります。
- 介護保険サービス: 介護が必要になった場合、要介護認定を受けることで、介護サービスの費用の一部が保険から給付されます。住み慣れた家で暮らし続けるための改修費用への助成などもあります。
- 医療費に関する制度: 高額療養費制度など、医療費の負担を軽減する制度があります。
- 自治体独自の支援: 一部の自治体では、高齢者向けの住まいに関する支援や、終活に関する相談窓口などを設けている場合があります。お住まいの自治体のホームページや窓口で確認してみましょう。
- 相続に関する相談窓口: 法テラスや税理士会などでは、無料または低額での法律相談や税務相談を受け付けている場合があります。
これらの制度は複雑に感じるかもしれませんが、地域の包括支援センターなどに相談することで、どのような制度が利用できるか、どのように手続きを進めれば良いかなどの情報を得ることができます。
家族で「お金のこと」を話し合う方法
お金の話は、家族であっても切り出しにくく、デリケートに感じることがあるかもしれません。しかし、親御さんが安心して終活を進め、また「もしも」の時に残された家族が慌てないためには、家族で「お金のこと」について話し合っておくことが非常に重要です。
- 話し合いを始めるきっかけ:
- 親御さんが「終活」や「将来のこと」に関心を持ち始めたタイミング。
- テレビや本で終活の話を見聞きしたとき。
- 親御さんの体調に変化があったとき。
- 親御さんの誕生日や敬老の日など、家族が集まる機会。 「最近、終活ってよく聞くけど、お父さん（お母さん）はどう考えてる？」といった軽い投げかけから始めてみるのも良いかもしれません。
- 話し合いの場所と雰囲気:
- 落ち着いてじっくり話せる場所（実家や、周りを気にせず話せる場所）。
- リラックスできる雰囲気。 無理強いせず、親御さんの気持ちを尊重する姿勢が大切です。
- 具体的な内容:
- 終活にかかる費用について、親御さんがどのように考えているか。
- 費用を賄うための資金の準備状況。
- 家族はどの程度、どのように関わる（費用負担、手続きのサポートなど）可能性があるか。
- 誰が、どのような財産を持っているのか（おおまかで構いません）。
- エンディングノートや遺言書について考えているか。
- スムーズに進めるためのコツ:
- 親御さんの意思を尊重する: まずは親御さんの考えや希望をじっくり聞くことから始めましょう。
- 責めない、非難しない: お金のことに限らず、終活全体について、親御さんの状況を理解しようとする姿勢が大切です。
- オープンな姿勢で: 子ども側も、自分たちの状況や考えを正直に伝えることで、信頼関係が築きやすくなります。
- 一度で全てを決めようとしない: 一度に全てを話す必要はありません。少しずつ、時間をかけて話し合いを進めましょう。
- 分からないことは一緒に調べる、専門家に相談する: お金のことや相続のことなど、専門的な内容で分からないことがあれば、家族だけで抱え込まず、信頼できる情報源を調べたり、必要に応じて専門家や公的機関に相談したりすることも大切です。
家族でお金の話をすることは、お互いの状況を理解し、安心して終活を進めるための大切なステップです。難しいと感じても、まずはできることから始めてみましょう。
まとめ：終活のお金、早めの準備と家族の話し合いが安心につながる
終活にかかるお金は、どのような終活を選ぶかによって大きく異なります。漠然とした不安を解消するためには、まず「どのようなことにお金がかかる可能性があるのか」を知り、利用できるサポートや制度について情報収集することが大切です。
そして、何よりも重要なのは、親御さんとご家族が「お金のこと」についてもオープンに話し合うことです。早めに準備を始め、家族で情報を共有し、必要に応じて専門家のサポートも活用することで、終活に関する経済的な不安を減らし、皆が安心して未来を迎えられるようになります。
終活は、お金のことだけでなく、人生の振り返りや、家族との絆を深める機会でもあります。一つずつ丁寧に進めていきましょう。