親の終活:実家をどうする?売却、賃貸、そのまま...選択肢と考えるべきこと
親の終活、実家をどうするか考えることの重要性
終活は、ご自身の人生の整理だけでなく、残されるご家族のために準備しておく大切な取り組みです。その中でも、多くの方が「どうすれば良いのだろう」と悩まれることの一つに「実家」があります。
住み慣れた大切な場所である実家。親御様がこれからも住み続けるのか、あるいは将来的に手放すことになるのか。ご家族にとっては、相続の問題だけでなく、維持管理の負担や費用など、様々なことが関係してきます。
実家について、親御様やご家族で早い段階から話し合い、どのようにするのかを決めておくことは、将来の不安を減らし、円満な終活を進めるために非常に重要です。しかし、「何から考えれば良いのか」「どんな選択肢があるのか」と、漠然とした疑問や不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
このページでは、親の終活における実家の取り扱いについて、考えられる主な選択肢と、それぞれのメリット・デメリット、そして検討する上で大切なポイントを分かりやすくご説明します。
実家をどうするか?考えられる主な選択肢
親の終活で実家について考える際、いくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を知り、ご家族にとって何が最善かを見つける手がかりにしてください。
1. このまま維持する
親御様が引き続き実家で暮らす場合や、ご家族の誰かが将来的に住む可能性がある場合などに選ばれる方法です。
- メリット:
- 住み慣れた場所で安心して暮らせる(親御様にとって)。
- すぐに大きな変化がなく、精神的な負担が少ない。
- デメリット:
- 固定資産税(不動産にかかる税金)や都市計画税がかかり続けます。
- 家の修繕費(屋根、外壁、水回りなど)が必要になる場合があります。
- 定期的な清掃や庭の手入れなどの維持管理の手間がかかります。
- 空き家になった場合、老朽化が進みやすく、管理の手間や費用が増える可能性があります。相続が発生した場合、相続人の間で負担や処分方法について意見が分かれることもあります。
2. 売却する
実家を売却し、現金化する方法です。親御様が施設へ入居される場合や、現在の住まいから別の場所へ引っ越す場合などに考えられます。
- メリット:
- 実家の維持管理の手間や費用(固定資産税など)がなくなります。
- まとまった現金を得ることができ、今後の生活費や介護費用、施設入居費用などに充てることができます。
- 相続時の財産分けがしやすくなります(現金での分割)。
- デメリット:
- 思い出の詰まった家を手放すことになります。
- 売却には時間と手間がかかる場合があります(不動産業者選び、内覧対応、契約手続きなど)。
- 売却にかかる費用(仲介手数料、登記費用、税金など)が発生します。
- 売却益が出た場合、税金(譲渡所得税など)がかかることがあります。
売却を検討する際は、まず複数の不動産業者に相談し、実家の価値(査定額)を知ることから始めると良いでしょう。
3. 賃貸に出す
実家を第三者に貸し出し、家賃収入を得る方法です。すぐに売却する予定はないけれど、空き家の状態にしておくのはもったいないと考える場合に選択肢となります。
- メリット:
- 家賃収入を得ることができます。
- 家が人の手に渡ることで、老朽化の進行を抑えられる可能性があります。
- デメリット:
- 入居者の募集や契約手続き、家賃の集金、設備の修繕対応など、管理の手間がかかります。これらの管理を専門の会社に依頼する場合は、管理手数料が発生します。
- 空室のリスクがあります。
- リフォームが必要になる場合があります。
- 家賃収入には税金がかかります。
賃貸経営には専門的な知識や手間がかかるため、不動産会社や賃貸管理会社に相談することをおすすめします。
4. その他(リバースモーゲージなど)
実家を担保に生活資金を借り入れ、亡くなった後に実家を売却して一括返済する「リバースモーゲージ」という方法もあります。自宅に住み続けながら資金を得られるメリットがありますが、利用条件やリスクもありますので、専門機関に相談し、内容をよく理解することが重要です。
実家について検討する際の大切なポイント
どの選択肢を選ぶにしても、検討する上で大切なポイントがいくつかあります。
- ご家族でよく話し合うこと: 親御様の気持ちはもちろん、ご家族それぞれの考えや希望、今後のライフプランなどを率直に話し合うことが最も重要です。それぞれの選択肢のメリット・デメリットを理解し、共有しましょう。
- 実家の状況を確認する: 建物の築年数、老朽化の具合、立地条件、周辺環境などを確認します。修繕が必要か、リフォームでどれくらい費用がかかるかなども、選択肢を考える上で重要な要素です。
- 経済的な側面を考える: 維持にかかる費用(固定資産税、修繕費)、売却した場合の収入と費用、賃貸に出した場合の収入と費用などを具体的にシミュレーションしてみましょう。税金に関することも確認が必要です。
- 将来のライフプランを考える: 親御様が今後どのような生活を送りたいか、ご家族はどのように関わっていくかなど、長期的な視点で考えましょう。
迷ったら専門家へ相談することも大切です
実家の終活は、不動産や税金、相続など、様々な専門知識が関わってきます。「自分たちだけでは判断が難しい」「何から手をつければ良いか分からない」と感じたら、迷わず専門家にご相談ください。
- 不動産業者: 実家の査定、売却や賃貸に関するアドバイス、手続きのサポートをしてもらえます。
- 税理士: 売却益にかかる税金や、相続税に関することなど、税金に関するアドバイスをもらえます。
- 弁護士: 相続に関する問題や、ご家族間の話し合いが難しい場合の調整などについて相談できます。
また、地域の「地域包括支援センター」でも、終活に関する相談窓口を紹介してもらえる場合があります。
まとめ
親の終活における実家についての検討は、少し大変に感じるかもしれませんが、ご家族が安心して暮らすため、そして将来の不要なトラブルを防ぐために非常に大切なステップです。
実家を「このまま維持する」「売却する」「賃貸に出す」といった選択肢には、それぞれメリットとデメリットがあります。親御様の意思を尊重しつつ、ご家族でしっかりと話し合い、実家の状況や経済的な側面、将来のライフプランを考慮して、最適な方法を見つけていきましょう。
そして、もし迷ったり不安になったりした時は、一人で抱え込まず、不動産業者や税理士などの専門家、あるいは身近な相談窓口を頼ることが大切です。早い段階から準備を始めることで、心にゆとりを持って終活を進めることができるでしょう。