終活で考える親の財産整理:家族が知っておくべきこと
親御さんの終活を考える中で、財産に関する話題は避けて通れないかもしれません。現金や預貯金だけでなく、不動産や株など、親御さんがこれまでに築き上げてこられた大切な財産をどのように整理し、将来に備えるかは、多くのご家族にとって気になる点でしょう。
しかし、「財産」と聞くと、難しそう、専門的な知識が必要そう、と感じてしまい、何から手をつければ良いか分からないという方もいらっしゃるかと思います。また、親御さんとの間でこの話題を切り出すことにためらいを感じることもあるかもしれません。
このページでは、親御さんの終活における財産整理について、ご家族が知っておくべき基本的な考え方や、最初の一歩として何から始めるべきかを、分かりやすく丁寧にご説明します。難しい専門用語は避け、落ち着いて理解していただけるような構成を心がけています。
なぜ終活で財産整理を考える必要があるのか
終活と聞くと、まず身の回りの物の片付けや、ご自身の葬儀やお墓のことをイメージされる方が多いかもしれません。もちろんそれらも大切な終活の一部ですが、財産に関する準備も非常に重要です。
終活で親御さんの財産について考えておくことは、主に二つの大きな目的があります。
一つ目は、親御さんご自身の安心のためです。ご自身の財産がどのように管理され、将来どのように使われるのか、あるいは大切なご家族にどのように引き継がれるのかが明確になることで、残りの人生をより心穏やかに過ごすことができます。
二つ目は、残されるご家族の負担を減らすためです。親御さんがお元気なうちに財産の内容や分け方について話し合っておき、必要な手続きを進めておくことで、将来、ご家族が相続手続きなどで困る事態を防ぐことができます。どこにどのような財産があるのかが分からず、手続きに膨大な時間や労力がかかってしまうケースは少なくありません。また、財産について事前に話し合っておかないと、ご家族間で意見の対立が生じる原因になることもあります。
終活における財産整理は、親御さんの「想い」をご家族にきちんと伝え、ご家族間の「困りごと」を減らすための、大切な準備なのです。
まずは何から始めるべきか:財産の全体像を把握する
「財産整理」と言っても、いきなり難しい手続きを始める必要はありません。最初のステップは、親御さんの財産の全体像を把握することです。これは「財産目録」を作成する作業と言い換えることもできます。
財産目録とは、親御さんが現時点でどのような財産をどれくらい持っているのかを一覧にしたものです。これは義務ではありませんが、財産整理を進める上で非常に役立ちます。
では、具体的にどのようなものをリストアップすれば良いのでしょうか。以下に代表的な項目を挙げます。
- 現金・預貯金:
- 自宅にある現金
- 銀行や信用金庫などの金融機関名、支店名、口座番号
- 定期預金や積立預金なども含めます
- 有価証券:
- 株式(証券会社名、口座番号)
- 投資信託
- 債券 など
- 不動産:
- ご自宅の土地・建物
- 所有している土地やアパート、マンションなど(所在地、面積、登記簿の情報)
- 動産:
- 自動車
- 骨董品や美術品、貴金属など価値のあるもの
- 保険:
- 生命保険、医療保険などの保険会社名、証券番号、保険金受取人
- その他:
- 貸付金や借入金(ローンなど負債も含まれます)
- ゴルフ会員権 など
これらの情報を、分かる範囲で構いませんので、一つのリストにまとめてみましょう。紙のノートでも、パソコンの表計算ソフトでも、ご自身にとって使いやすい方法で作成してください。
この段階では、正確な金額が分からなくても問題ありません。「どこの銀行に口座がある」「この場所に土地を持っている」といった情報だけでもリスト化することが大切です。
財産目録を作成する際のポイント
- 親御さんと相談しながら: もし可能であれば、親御さんと一緒に、あるいは親御さんに確認しながら作成するのが理想的です。親御さんしか知らない情報(例えば、昔使っていたけれど今は忘れている口座など)があるかもしれません。
- 通帳や権利証などの確認: 預貯金の残高は通帳やインターネットバンキングで、不動産の情報は権利証や固定資産税の通知書などで確認できます。無理のない範囲で、情報を集めましょう。
- 見つけやすい場所に保管: 作成した財産目録は、後でご家族が見つけやすい場所に保管しておきましょう。エンディングノートと一緒にまとめておくのも良い方法です。
この財産目録は、親御さんの財産の全体像を「見える化」するためのものです。これができれば、次のステップとして、それぞれの財産についてどのように考えていくかを具体的に検討し始めることができます。
財産整理の次のステップ:想いを考える
財産目録が作成できたら、次はそれぞれの財産について、親御さんの「想い」を整理する段階です。
- この財産を誰に引き継ぎたいか
- 相続税対策として生前贈与を検討するか
- 特定の方に確実に引き継ぎたい財産はあるか(遺言書の検討)
- 管理が大変な不動産をどうするか
こうしたことを、親御さんご自身の気持ちを中心に考えていきます。ご家族としては、親御さんの考えを尊重しつつ、必要に応じてサポートすることが求められます。
ただし、相続や税金に関する内容は専門的な知識が必要になる場合があります。複雑なケースや、ご自身だけで判断するのが難しい場合は、税理士や弁護士、司法書士といった専門家に相談することも検討しましょう。専門家は、ご家族の状況に合わせた適切なアドバイスや手続きのサポートをしてくれます。
まとめ:無理なく、少しずつ進めることが大切
終活における親御さんの財産整理は、ご家族にとって簡単ではないテーマかもしれません。しかし、早い段階から少しずつ準備を進めておくことで、将来の不安を減らし、親御さんの大切な財産をスムーズに引き継ぐことにつながります。
まずは、今回ご紹介した「財産目録の作成」から始めてみてください。完璧を目指す必要はありません。分かる範囲でリストアップし、「こんな財産があるんだな」と全体像を掴むことから始めましょう。
この過程で、親御さんと財産について話し合う機会が持てれば、それは素晴らしい一歩です。もし直接話し合うのが難しい場合でも、まずはご家族だけで情報を整理してみることから始めても良いでしょう。
財産整理は、一度に全てを終わらせる必要はありません。無理のない範囲で、一つずつ丁寧に進めていくことが大切です。この情報が、皆様の終活準備の一助となれば幸いです。