親の終活、誰に相談すれば安心?専門家と協力するメリット
親御さんの終活は、ご本人だけでなく、ご家族にとっても大切な取り組みです。どこから手をつけて良いか分からない、誰に相談すれば良いのか見当がつかない、といったお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。終活には、財産、相続、介護、医療、手続きなど、多岐にわたる内容が含まれており、時には専門的な知識や判断が必要になる場面が出てきます。
ご家族だけで全てを抱え込もうとすると、大きな負担になったり、思わぬ落とし穴があったりする可能性も考えられます。そんな時に頼りになるのが、終活に関する専門家です。専門家と協力することで、よりスムーズに、そして安心して終活を進めることができるようになります。
終活で専門家に相談するメリット
終活において専門家を頼ることは、多くのメリットをもたらします。
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正確な情報と専門知識を得られる 法律や税金、公的な手続きなど、終活には専門的な知識が欠かせません。専門家は最新の正確な情報に基づいて、個別の状況に合ったアドバイスを提供してくれます。インターネット上の情報だけでは分からない、より具体的な対応策を知ることができます。
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手続きをスムーズに進められる 相続手続きや遺言書作成、各種契約の見直しなど、終活には煩雑な手続きが伴います。専門家は手続きのプロフェッショナルであり、必要な書類の準備や役所とのやり取りなどを効率的に進めるサポートをしてくれます。これにより、手続きにかかる時間や労力を大幅に削減できます。
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客観的な視点からのアドバイス 終活は感情が絡みやすく、ご家族だけでは冷静な判断が難しい場面があります。専門家は客観的な立場で状況を把握し、ご本人やご家族にとって最善となるような中立的なアドバイスを提供してくれます。
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家族間のトラブルを未然に防ぐ 相続を巡る問題や、親御さんの意思決定に関することなど、終活は家族間で意見が分かれたり、将来のトラブルの原因になったりすることがあります。専門家が間に入ることで、感情的にならずに話し合いを進めたり、法的な観点から公平な解決策を提案してもらったりすることが可能です。
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精神的な負担の軽減 終活の全てを自分たちだけで行おうとすると、精神的なプレッシャーが大きくなることがあります。専門家に相談し、サポートを受けることで、抱え込んでいた不安や負担を軽減し、安心して終活に向き合えるようになります。
終活に関わる主な専門家とその役割
終活には様々な専門家が関わりますが、ここでは代表的な専門家とその役割をご紹介します。
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弁護士 法律全般の専門家です。相続を巡る家族間のトラブル(遺産分割協議がまとまらないなど)の解決、遺言書の有効性に関する相談、遺言執行者としての手続き、成年後見制度の利用に関する相談や申立てなど、法的な問題が生じた場合に頼りになります。
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税理士 税金に関する専門家です。相続税や贈与税の計算、申告手続き、生前贈与や相続対策に関する税務上のアドバイス、財産の評価などを行います。相続税の申告は複雑なため、税理士に依頼する方が多いです。
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行政書士 書類作成や手続きの専門家です。遺言書作成のサポート(原案作成や公正証書遺言の証人)、相続人調査、相続関係図の作成、遺産分割協議書の作成、不動産以外の相続手続き(預貯金の名義変更など)の代行などを行います。
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ファイナンシャルプランナー(FP) お金に関する幅広い知識を持つ専門家です。親御さんの資産状況の整理、将来のライフプランに基づいた資金計画の相談、相続対策や保険の見直しなど、終活全体のマネープランニングに関して総合的なアドバイスを行います。特定の専門分野だけでなく、全体のバランスを見て提案してほしい場合に適しています。
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ケアマネージャー(介護支援専門員) 介護に関する専門家です。親御さんの介護が必要になった場合、介護保険サービスの利用計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者との調整を行います。終活の一環として、将来の介護についても考える際に重要な役割を担います。
この他にも、不動産に関する相談であれば不動産業者、遺品整理であれば遺品整理業者など、終活の具体的な内容に応じて様々な専門家が存在します。
どんな時に、誰に相談すれば良いかの目安
「一体、誰に相談すれば良いのだろう」と迷うことも多いかと思います。対応したい終活の内容に合わせて、おおよそ以下のような目安で専門家を検討してみましょう。
- 相続財産の種類が多く複雑、または家族間で相続について意見が対立している可能性がある場合:弁護士
- 相続税が発生するか心配、または相続税の計算や申告手続きが必要な場合:税理士
- 遺言書を作成したい、または相続手続きの一部(相続人調査、書類作成、預貯金手続きなど)を代行してほしい場合:行政書士
- 親の資産全体を整理し、将来の資金計画や相続対策について総合的にアドバイスを受けたい場合:ファイナンシャルプランナー(FP)
- 将来の介護について相談したい、または介護サービスの利用を検討している場合:ケアマネージャー(地域包括支援センターなども相談先になります)
- 親の判断能力に不安があり、財産管理や身上監護を任せる必要がある場合:弁護士や司法書士、社会福祉士(成年後見制度の専門家)
もちろん、一つの問題が複数の専門分野にまたがることもあります。その場合は、まず相談しやすい専門家や、終活全般に詳しいFPなどに相談し、必要に応じて他の専門家を紹介してもらうという方法も考えられます。
専門家へ相談する前に準備しておきたいこと
専門家への相談をより有益なものにするために、いくつか準備しておくと良い点があります。
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相談したい内容を整理する 何について最も困っているのか、どのような情報を知りたいのかを具体的にまとめておきましょう。メモ書き程度でも構いません。質問したいことを事前に書き出しておくことも有効です。
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関連資料をまとめる 親御さんの財産に関する資料(預貯金通帳、不動産の権利書、保険証券など)、家族構成がわかるもの(戸籍謄本など)、これまでの経緯などがわかる資料を準備しておくと、専門家が状況を把握しやすくなります。
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家族とある程度話し合っておく 可能であれば、親御さんや他のご家族と、終活について話し合った内容や、家族としてどのようなことを希望するのかを共有しておくと良いでしょう。これにより、専門家も家族全体の意向を踏まえたアドバイスをしやすくなります。
専門家の探し方・選び方
専門家を探す方法としては、以下のようなものがあります。
- 知人や専門家からの紹介 信頼できる紹介であれば安心感があります。
- インターネット検索 自宅近くの専門家を探したり、専門分野で絞り込んだりできます。ただし、情報が多いため慎重な見極めが必要です。
- 自治体や専門家団体の相談窓口 無料相談を実施している場合もあります。まずはこのような窓口を利用してみるのも良いでしょう。
- 専門家団体のウェブサイト 各専門家団体(弁護士会、税理士会、行政書士会など)のウェブサイトで会員名簿を検索できることがあります。
専門家を選ぶ際は、相談内容の専門分野に強いか、実績があるか、料金体系が明確か、そして何よりも「この人になら安心して任せられる」と思えるか、相性が良いかどうかも大切な判断基準となります。初回無料相談などを利用して、複数の専門家と話をしてみることも検討しましょう。
専門家との協力で終活を安心に進める
終活は、ご本人とご家族が共に未来を準備していく大切なプロセスです。時には複雑で、一人や家族だけで対応するのが難しい壁にぶつかることもあるかもしれません。そんな時、必要に応じて専門家を頼ることは、決して恥ずかしいことでも、特別なことでもありません。
専門家の知識や経験を借りることで、正確な情報に基づいた適切な判断ができ、手続きをスムーズに進めることができます。そして何より、ご家族の精神的な負担を軽減し、「これで安心だね」と皆が納得できる形で終活を完結へと導くことができるでしょう。
一人で悩まず、必要に応じて専門家の力を借りながら、親御さんにとって、そしてご家族にとって、納得のいく終活を進めていってください。