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親の終活と併せて考える相続の基本:家族が知っておきたいこと

Tags: 終活, 相続, 相続手続き, 財産, 家族

親の終活を考え始める中で、財産のことや、もしもの時に家族が困らないように準備を進めることは、多くのご家庭で大切なテーマとなります。その準備の一つとして、そして終活の延長線上にあるものとして、「相続」について考える機会があるかもしれません。

相続という言葉を聞くと、難しそう、専門的な知識が必要そうと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、相続の基本的な仕組みや流れを知っておくことは、親御様が生前準備を進める上で、また、万が一の際に家族が慌てずに対処するために、非常に役立ちます。

この記事では、終活と併せて家族が知っておきたい、相続の基本的な事柄について、分かりやすくご説明します。

相続とは何か

相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産や権利、義務を、特定の方が引き継ぐことです。財産というと、預貯金や不動産、株式などを思い浮かべる方が多いと思いますが、借金や未払いの税金なども相続の対象となります。

相続は、亡くなった方の意思(遺言書)に基づいて行われる場合と、法律で定められた順位に従って行われる場合があります。

誰が相続人になるのか(法定相続人)

遺言書がない場合や、遺言書があってもそれに書かれていない財産がある場合などは、民法という法律で定められた「法定相続人」が財産を相続することになります。

法定相続人になれる方には順位があります。

  1. 常に相続人となる方:配偶者

    • 亡くなった方に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となります。
  2. 配偶者以外の相続人(順位があります)

    • 第一順位:子
      • 亡くなった方に子がいる場合、子が相続人となります。子が既に亡くなっている場合は、その子(孫など)が代わりに相続人となることもあります(代襲相続)。
    • 第二順位:親や祖父母など(直系尊属)
      • 亡くなった方に子がいない場合、親や祖父母など(直系尊属といいます)が相続人となります。親がご存命であれば親、親が既に亡くなっていれば祖父母、というように近い世代の方が優先されます。
    • 第三順位:兄弟姉妹
      • 亡くなった方に子も親などの直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子(甥や姪)が代わりに相続人となることもあります(代襲相続)。

つまり、配偶者がいる場合は配偶者と、上記の順位で一番高い順位の方が相続人となります。配偶者がいない場合は、上記の順位で一番高い順位の方のみが相続人となります。

相続財産はどう分けるのか

相続財産をどのように分けるかは、いくつかの方法があります。

  1. 遺言書がある場合
    • 亡くなった方が遺言書を作成していた場合、原則としてその遺言書の内容に従って財産を分けます。ただし、法定相続人には「遺留分」という最低限相続できる権利が法律で保障されている場合もあります。
  2. 遺言書がない場合
    • 遺言書がない場合は、法定相続人全員で「遺産分割協議」を行います。
    • 遺産分割協議とは、相続人全員で話し合い、どの財産を誰がどれだけ相続するかを決めることです。話し合いがまとまったら、「遺産分割協議書」という書類を作成します。相続人全員の同意が必要です。
    • 話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることもあります。

相続税について

相続した財産の合計額が、一定の金額(基礎控除額といいます)を超える場合に、相続税がかかる可能性があります。基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。

相続税がかかるかどうか、かかる場合にいくらになるかは、財産の評価や相続人の数によって異なります。詳しい計算や申告は専門的な知識が必要になるため、税理士などの専門家に相談することが一般的です。

相続手続きのざっくりとした流れ

親御様が亡くなった後、相続に関する手続きは以下のような流れで進みます。

  1. 亡くなったことの確認と医師による死亡診断書の取得
  2. 市町村役場への死亡届の提出(通常7日以内)
  3. 遺言書の有無の確認(あれば検認手続きが必要な場合も)
  4. 相続人の特定(戸籍謄本などを集めて調査します)
  5. 相続財産の調査と評価(預貯金、不動産、有価証券、借金などを洗い出します)
  6. 相続放棄または限定承認の手続き(必要な場合)(相続開始から3ヶ月以内)
    • 相続財産より借金が多い場合など、相続したくない場合は「相続放棄」を検討します。
  7. 所得税の準確定申告(必要な場合)(相続開始から4ヶ月以内)
  8. 遺産分割協議(遺言書がない場合)
  9. 相続税の申告と納付(必要な場合)(相続開始から10ヶ月以内)
  10. 預貯金や不動産の名義変更などの手続き

これらの手続きには期限があるものも多く、また専門的な書類の準備が必要になる場合もあります。

終活が相続で役立つこと

親御様が終活として、ご自身の財産を整理したり、財産リストを作成したり、エンディングノートや遺言書に財産に関する希望を記しておいたりすることは、残されたご家族が相続手続きを進める上で、大きな助けとなります。

どこにどんな財産があるか分からない、借金はないのか、といったことをゼロから調査するのは、想像以上に時間と手間がかかります。また、親御様の財産をどのように分けたいかという意思が不明確な場合、家族間での話し合い(遺産分割協議)が難航することもあります。

生前に財産に関する情報を整理し、家族と共有しておくこと、そしてご自身の希望を形にしておくことは、ご家族が相続手続きをスムーズに進めるための、そして家族間の不要な争いを避けるための、大切な準備となるのです。

まとめ

相続は、多くの方にとってあまり馴染みのない事柄かもしれません。しかし、終活と併せてその基本を知っておくことは、将来のご家族の負担を減らし、安心につなげる第一歩となります。

この記事でご紹介したことは、相続のごく基本的な部分です。具体的な手続きや相続税のことなど、さらに詳しく知りたい場合や、個別の状況に応じた対応が必要な場合は、弁護士、司法書士、税理士といった専門家や、地域の相談窓口に相談することを検討してください。

相続の基本を知り、親御様の終活と関連付けて考えることで、ご家族皆さんにとってより安心できる将来につながることを願っております。