終活で知っておきたい供養の種類:散骨、樹木葬、手元供養など
終活を進める上で、「もしもの時、自分のお骨をどうするか」という供養の方法について考えることは大切な課題の一つです。多くの方が「お墓に入る」ことを思い浮かべるかもしれませんが、近年では、さまざまな理由からお墓以外の供養方法を選ぶ方が増えています。
選択肢が増えたことで、かえって「どれを選べば良いのだろう」「どんな方法があるのか分からない」と迷われる方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、終活で知っておきたい供養の種類について、初心者の方にも分かりやすくご説明いたします。
供養とは何か
そもそも「供養」とは、故人の冥福を祈り、霊を慰めるために行う行為全般を指します。日本では、お墓を建てて遺骨を納めることが一般的でしたが、これは数ある供養の方法の一つにすぎません。
大切なのは、残された方が故人を偲び、弔う気持ちを持つことです。その気持ちを表す方法は一つではなく、時代とともに多様化しています。
従来の「お墓」について
多くの方がイメージするお墓は、石材で作られた墓石があり、その地下やカロート(納骨室)に遺骨を納めるものです。家族や親族が代々受け継ぎ、お参りや手入れをしていきます。
この形式には、先祖代々同じ場所で供養できる安心感や、子や孫がお参りする場所があるというメリットがあります。一方で、墓地の取得費用、墓石の建立費用、年間管理費などがかかることや、お墓の承継者がいない場合に「無縁墓」になる可能性などの課題も指摘されています。
多様化する供養の選択肢
従来の形式にとらわれない、新しい供養の方法が広まっています。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。
散骨(さんこつ)
散骨は、火葬した後の遺骨を粉末状にし、海や山などに撒いて自然に還す方法です。「自然に還りたい」「お墓に縛られたくない」という考えの方に選ばれています。
- 種類: 海洋散骨(船で沖に出て撒く)、山林散骨(許可された場所)、宇宙葬(ロケットやバルーンで宇宙空間に送る)などがあります。
- メリット: 墓地や墓石が必要ないため費用を抑えられる、お墓の承継問題を考える必要がない、故人の希望を叶えられる。
- デメリット: 一度散骨すると元に戻せない、親族の理解が得られにくい場合がある、散骨場所によっては規制がある。
- 注意点: 法律で定められたルールはありませんが、自治体によっては条例で規制があるため確認が必要です。また、私有地や他人の所有する山林への散骨はできません。必ず専門の業者に依頼するのが一般的です。
樹木葬(じゅもくそう)
樹木葬は、樹木や花を墓標(墓石の代わり)として、その根元などに遺骨を埋葬する方法です。自然の中で眠りたい、永代供養(管理を霊園などが行う)を希望するという方に選ばれています。
- 種類: シンボルツリーの下に個別に埋葬する「里山型」や、広大な敷地に樹木を植え、共同の場所に合祀(ごうし)する「公園型」などがあります。
- メリット: 自然志向、墓石代がかからない、永代供養付きが多く管理の心配がない、比較的費用を抑えられる場合がある。
- デメリット: 合祀の場合は後から遺骨を取り出せない、一般のお墓とイメージが異なるため親族の理解が必要な場合がある。
- 注意点: 墓地として許可された霊園や寺院が行っているものを選びます。契約内容(個別か合祀か、何年間の供養かなど)をよく確認することが大切です。
納骨堂(のうこつどう)
納骨堂は、屋内型の施設に遺骨を安置する場所です。ロッカー式、仏壇式、自動搬送式など様々なタイプがあります。駅からのアクセスが良い都市部を中心に増えています。
- 種類: ロッカー式、仏壇式、自動搬送式、位牌式など。
- メリット: 駅からのアクセスが良いことが多い、天候を気にせずお参りできる、管理の手間がかからない(永代供養付きが多い)、セキュリティがしっかりしている。
- デメリット: 屋内であるため自然志向の方には向かない、利用期間が決まっている場合がある、費用がお墓に近い場合もある。
- 注意点: 施設によって利用期間や費用、お参りの方法などが異なります。必ず現地を見学し、説明をしっかり聞くことが重要です。
手元供養(てもとくよう)
手元供養は、遺骨の一部を自宅などに置いて供養する方法です。故人をいつも身近に感じたい、という気持ちから選ばれています。
- 種類: 自宅の供養壇に安置する、ミニ骨壺に入れる、遺骨を加工してアクセサリーにする、位牌や写真と一緒に飾るなど様々な形があります。
- メリット: 故人をいつも身近に感じられる、お墓が遠い場合でも供養できる、費用を抑えられる。
- デメリット: 親族の理解が得られにくい場合がある、自宅での管理が必要、全ての遺骨を手元に残すわけではない(残りは別にお墓や散骨などで供養することが多い)。
- 注意点: 遺骨をどのように加工するか、どこに置くかなど、事前に家族とよく話し合うことが大切です。
どの供養方法を選ぶか検討する際のポイント
多様な選択肢の中から、ご自身やご家族にとって最適な方法を選ぶためには、いくつかのポイントを考慮すると良いでしょう。
- ご本人の希望: まずは何よりも、ご本人がどのような供養を希望されているかを確認することが大切です。
- ご家族の意向: 残されるご家族がどのように供養していきたいか、お参りしたいかなども重要な要素です。特定の供養方法に抵抗がないか、話し合いましょう。
- 費用: それぞれの供養方法でかかる費用は異なります。予算も考慮して検討します。
- 管理の手間: お墓参りや管理を誰がどのように行うか、手間をかけたくない場合は永代供養付きの樹木葬や納骨堂、散骨などが選択肢になります。
- 宗教・宗派: 宗教や宗派によって、認められている供養方法や考え方が異なる場合があります。菩提寺などがある場合は事前に確認すると良いでしょう。
- 立地・アクセス: お参りする方がいる場合、アクセスが良い場所にあるかどうかも考慮に入れると良いでしょう。
まとめ
終活で考える供養の方法は、従来の「お墓」以外にも散骨、樹木葬、納骨堂、手元供養など、様々な選択肢があります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがありますので、ご自身やご家族の考え方、価値観に合う方法をじっくりと検討することが大切です。
これらの情報を参考に、ぜひご家族で話し合ってみてください。そして、疑問や不安があれば、霊園、石材店、葬儀社などの専門家に相談してみることも有効です。専門家はそれぞれの方法について詳しく説明し、皆さまに合った選択肢を見つけるお手伝いをしてくれることでしょう。